いのちのパレード 恩田陸 実業之日本社

「奇想短編シリーズ」と銘打って「Jノベル」という雑誌に三年半にわたって連載された短編+書き下ろしの「夜想曲」と全部で15編を収録。 ジャック・フィニイ、ジョン・コリアなど早川書房の異色作家短編集へのオマージュと言うべき幻想と怪奇に満ちた短編集。 正直、ピンと来ない作品もあったりしたけど、蟲師っぽい雰囲気の「蝶使いと春、そして夏」、幻想的なイメージが鮮烈な「かたつむり注意報」、ブラック…

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マジカル・ドロップス 風野潮 光文社

若くして亡くなった親友がタイムカプセルに遺した思い出のドロップには2時間17分限定の魔法が備わっていた……講談社児童文学賞、野間児童文芸新人賞、椋鳩十児童文学賞を受賞した著者が描く奇跡を手にした42才の主婦・菜穂子の青春回帰ストーリー。 メルモちゃんの赤いキャンディーみたいなドロップをかじれば15才の自分に戻れるという設定自体はかなり魅力的。 文法が児童小説に則ってるだけあって、…

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朝日のようにさわやかに 恩田陸 新潮社

短編集としては『図書館の海』以来五年ぶりとなる短編集。 ミステリー、SF、ファンタジー、ホラー、童話などなどバラエティに富んではいるものの、どれを読んでも恩田陸らしさに溢れていて読みごたえあり。  いやまあ表題作はそんなでもなかったんだけど、『「ABC」殺人事件』というアンソロジー企画のために書き下ろした会話だけのミステリ「あなたと夜と音楽と」、いかにも恩田陸らしい雰囲気の「赤い…

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四畳半神話大系 森見登美彦 太田出版

森見登美彦長編第二作。 日本ファンタジーノベル大賞を受賞しつつもほとんどファンタジーじゃなかった前作『太陽の塔』と違い今回はきっちりSF、それもパラレルワールド物だったりする。 構成的には、繰り返しのくどさがミソというか。 もちろん、独特の文体で語られるどうしようもない男たちの物語&学生小説としての魅力は健在。 ヒロインの明石さん&もちぐま(表紙参照)もなかなかキュートだしと…

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ミラージュの罠 クラッシュ・ブレイズ 茅田砂胡 中央公論新社

クラッシュ・ブレイズシリーズ最新刊。 『ソフィアの正餐会』のザック・ダグラス再登場の巻。 旧交を温めるダグラスとリィの前に現れる謎の襲撃者ということでまたしても騒動に巻き込まれるリィとその愉快な仲間たち(キングとジャスミンはお休みだけど、レティーとヴァンツァーは登場)みたいな。 今回はいちおうエスピオナージュ仕立てではあるんだけど、そこはそれいつものノリで軽快に読ませます。 …

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笑う怪獣 ミステリ劇場 西澤保彦 新潮文庫

怪獣や宇宙人や改造人間が特に何の脈絡もなく出てくるバカミス系連作短編集。 内容が内容だけに、装画、挿絵が喜国雅彦ってのが実にはまってます。 正直、前半はただくだらないだけだったけど、エログロさや、不条理感が控えめな後半の二つは良かった。 特に「女子高生幽霊綺譚」は女子高生幽霊がレギュラーになった続編があれば読んでみたいぐらい。 まあ、続編が出る気配はまったくないのだけど。 …

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図書館内乱 有川浩 メディアワークス

図書館戦争、待望の続編。 一作目より素直に面白いです。このへんは設定、キャラクターが既に固まっているというシリーズ物の強みというか。 今回はちょっと連作短編風の趣向。 ストーリー的にはタイトル通り図書館内部の確執がメインなんだけど、郁の父親のエピソード「両親攪乱作戦」がちゃんと伏線になってるあたりの巧さや柴咲など脇役の描写が丁寧できっちり読ませます。 ラスト、微妙に手塚と柴咲のフ…

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学校を出よう! 2 I‐My‐Me 谷川流 電撃文庫

谷川流のもう一つの代表作というべき「学校を出よう!」シリーズ第2作。 1作目が1作目だけにどうやって続編にするんだろうと思ったら、まったく違う舞台でまったく違う話がかろやかに展開する。 ロジカルなプロットが素晴らしいタイムトラベルSFであり、切ない恋物語でもある。 今回は完全に筒井康隆『時をかける少女』へのオマージュと言っていいかな。まあ、駆けるのは男なんだけど。後、『機動戦艦…

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ソフトタッチ・オペレーション 西澤保彦 講談社ノベルス

久々に出たチョーモンイン・シリーズ最新刊。 メインはやはり、中編というべき表題作の「ソフトタッチ・オペレーション」。 妄想過多な主人公のおかげで気楽に読めます。まずまずのハッピーエンドってのも嬉しいところ。 ちなみに他の短編はいかにも西澤保彦らしい後味の悪さが標準装備(笑)。 極めつけは動機が実にグロテスクな「闇からの声」かな。 とまあ、全体的にまずまず面白かったんだけど、…

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図書館戦争 有川浩 メディアワークス

本の雑誌上半期ベスト1にもなった有川浩の新シリーズ。 作者曰く、月9の連ドラを目指したってことらしいけど、たしかにこれまでで一番読みやすいです。 もちろん図書館が武装して本を不当に狩る「メディア良化委員会」と戦うという設定も秀逸、シリーズ化も当然だろうね。 とかいいつつ、正直なところラスト近くまではいまいち物足りないなあと思ってたんだけど、そうかそう来るかのラストでかなり納得。…

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女子高生、リフトオフ!―ロケットガール 1 野尻抱介 富士見書房

女子高生が、体重が軽いという一点で宇宙飛行士になって宇宙を目指すというお話。 コミカルな展開で突っ走るかと思いきや、ディティールは細部まできっちり詰められていて、お話のリアリティをきっちり支えています。 ロケットの打ち上げが近づくにつれ、ヒートアップする高揚感が素晴らしい。 もしかして、ヒロインの魅力が足りないという人もいるかもしれないけど、ゆかりのキャラクターが本格的に立ってくる…

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9S〈ないんえす?〉SS 葉山透 電撃文庫

シリーズ番外編は、コミカルな短編集。 本編での掛け合いも楽しかったんだけど、本編だと、逃亡してるかどちらかが捕まってるかというハードな状況ばかりで笑ってばかりいられなかったからなあ。 その点、今回の作品はひたすらコメディに徹してるので素直に楽しめました。 実際あとがきに、作者本人も書いてて楽しかったとあるんだけど、たしかに素直にその楽しさが伝わってくるというか。 由宇や麻…

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ある日、爆弾がおちてきて 古橋秀之 電撃文庫

ボーイ・ミーツ・ガールの青春小説であり、粒ぞろいの時間物SF短編集。 今頃読んでおいてなんだけど、2chライトノベル板大賞2005年下半期 大賞受賞作、2005年ラノリン杯一位作品などなど、評判が高いことも納得できる作品でした。 『タツモリ家の食卓』や『サムライ・レンズマン』もそうなんだけど、古橋秀之はほんとにSFが好きなんだなあということが伝わってくるというか。 好みとしては…

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アラビアの夜の種族 古川日出男 角川書店

評判通り、これは凄い。まさに現代に蘇るアラビアンナイト。 しかも、それが途中でウィザードリィを彷彿とさせるRPG小説になってくとはね。 小説自体ものすごく凝った設定になっててそれはそれで興味深いんだが、とにもかくにも語られる物語がめちゃくちゃ面白いのがミソ。 魅力的なキャラクター、絶妙のストーリーテリング、闊達な語り口で圧倒的に読ませます。 これほどまでに本を読む愉しさを味わ…

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カスタムチャイルド 壁井ユカコ 電撃文庫

マドカと三嶋の奇妙な共同生活の描写がすごく良い。何だろう、この心地よさは。 ワケありの二人の不思議なふれあい。 二人が過ごした何でもない日々の数々、もう戻らないかけがえのない日々。生きることに不器用な二人の姿が何とも愛おしくて…。 とまあ兎にも角にもツボにはまる描写で、別れのシーンは思わず涙が…。 ただ、中盤以降の展開はちょっといただけなかったかな。 晴継なんてほんとにただ…

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ミッションスクール 田中哲弥 ハヤカワ文庫JA

あの傑作『やみなべの陰謀』から7年ぶりに刊行された連作短編集。連作短編集と言っても共通点は舞台がミッションスクール、主人公は高校生というだけで、エスピオナージュ、ホラー、ファンタジー、アメコミ、純愛ロマンと主人公もテーマもバラバラな五編が収められている。 当初は「電撃hp」に掲載されていたのだけど、結局は早川書房から出版されたという曰く付きの作品でもある。そのへんの経緯は内容はわりと深刻な…

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涼宮ハルヒの憤慨 谷川流 角川スニーカー文庫

アニメ化で話題のハルヒシリーズ8作目。 今回は「編集長★一直線」、「ワンダリング・シャドウ」の中編二つ。 「編集長★一直線」は久々に素直に面白いと思った。作中作も含めてとにかく上手い。みくるの童話、キョンの叙述トリックな恋愛小説も良かったけど、長門の幻想ホラー風味の私小説が特に印象的。なんか読んでて切なくなってきたよ。 「ワンダリング・シャドウ」は、まずまずか。プロットうんぬんより…

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2005年のロケットボーイズ 五十嵐貴久 双葉社

悪くない、悪くない青春小説なんだが、何だろうこの物足りなさは。 題材は面白いし、ストーリーもラストのカタルシスのなさに目をつぶればまずまず、やはり問題は主人公のキャラクター設定か。 これは意図的だと思うんだけど、主人公がディレクター的役割(ほとんどADだけど)ってのがいまいちノレない原因だろうなあ。 後、個人的に過去を振り返る形式の青春小説ってのは好きじゃないってのもある。 …

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流れゆく雲 グイン・サーガ107 栗本薫 ハヤカワ文庫JA

懐かしの『風のゆくえ』みたいな巻。 カメロンのところはまずまず、今回はイシュトも良い方向に変わったままだしさ、まあくまで今のところはなんだけどなー。 ただリンダのパートがなあ…。 パロ立て直しに一生懸命なのは立派なんだけど、レムスとの再会シーンはバカ姉弟というしか。 とはいえ久々の予言はなかなか興味深いわけで。 廃王がってあたりは、やはり後のパロの闇王国への伏線なの…

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オルフェの方舟 ブギーポップ・イントレランス 上遠野浩平 電撃文庫

久々にブギーポップが活躍。こういうハード路線は久々な気が。 ラストの切なさは印象に残るけど、話として面白いかどうかと言うとかなり微妙。 ところで、蒼衣とリセットが出てきてるってことは『ロスト・メビウス』より前の話で、ビートの話題が出てる時点で『ディシプリン』より後なのだろうか。 でも、『ディシプリン』のラストでえらい事になった凪も『ロスト・メビウス』には出てたな、そういえば。 …

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海の底 有川浩 メディアワークス

今回は作者があとがきで書いてるように「潜水艦で十五少年漂流記」がメインで、化け蟹退治はサブ。 しかも、その化け蟹というか巨大ザリガニも自衛隊が出てくるとあっさり片付いちゃってちょっと拍子抜け。 もちろん、機動隊が犠牲にならざる得ない状況を描きたかったんだろうけど、やはり少し物足りないものが。 後、前作『空の中』同様、わがままなガキが状況を引っかき回すのを読まされるストレスと、ハッピーエ…

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イリヤの空、UFOの夏〈その4〉 秋山瑞人 電撃文庫

作者は、浅羽をヒーローとしてではなく、あくまで等身大の実に無力な少年として描きだす。 浅羽の少年らしいスケベ心が生んだ齟齬、その結果少年はあまりに大きな代償を払うことになる。この作者はほんとに……。 私も思いたい。 たとえそれがあまりにも酷い計画からだったとしても、浅羽直之と出会った伊里野は幸せだったのだと。何も知らずに死んでいくよりも伊里野は幸せだったのだと。 だから、せめて最…

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イリヤの空、UFOの夏〈その3〉 秋山瑞人 電撃文庫

正直このシリーズ、世評ほど面白いとは思ってなかったんだけど、この巻を読んで全面撤回。やっぱり秋山瑞人は凄い。 晶穂と伊里野の大食い対決から「水前寺、応答せよ」の前半までいい感じの青春小説の流れになって来てると思いきや、実はこれが伏線で、そこからのシビアな展開を浮き彫りにさせるわけだ。 最後の頼りだった水前寺が捕まり、今まで本人が認める通り何も出来なかった浅羽が見せる捨て身の行動。物理…

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イリヤの空、UFOの夏〈その2〉 秋山瑞人 電撃文庫

エヴァに、最終兵器彼女に、妖精作戦に、加えて今度はビューティフル・ドリーマーまで。それらの先行作品を取り込んで、きちんと自分の物にしているところが素晴らしい。 学園祭編の「十八時四十七分三十二秒」ももちろん大好きだけど、一番のお気に入りは「正しい原チャリの盗み方 後編」だったりする。 人気のないグランドに走り出る。夏で、夏休みで、まるで卒業式のような晴れ晴れとした寂しさがあって。夕子…

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イリヤの空、UFOの夏〈その1〉 秋山瑞人 電撃文庫

『妖精作戦』、『エヴァ』、『最終兵器彼女』をミックスして秋山瑞人流にするとこうなるかみたいな。 背景のシビアさと日常描写の対比とか、こういうのは巧い人じゃないと書けないだろう。でももう少し自分が若いときに読みたかったという気はする。 まあ、まだ物語は始まったばかり、来月出る2巻に期待したい。……でも、やっぱりどっちかというと『EG』が先に読みたいなあ。 2001年10月読了。 …

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ボルボロスの追跡 グイン・サーガ106 栗本薫 ハヤカワ文庫JA

グイン・サーガ106巻。 最近、復調気味のグイン・サーガだけあって今回もそれなりに読ませます。 特にグインがスーティーの将来に思いをはせるシーンはこの物語ならではの醍醐味なんじゃないかと、ま懲りもせず掠われるマリウスとか、あっさりグインに籠絡されたアストリアスとははご愛敬だけどなー。 後リギアの性格にも微妙に違和感が。 それにしても、あいかわらずというかほんとに話が進まな…

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空の中 有川浩 メディアワークス

祝『SFが読みたい! 2006年版』9位ということでレビューを公開してみました。 なるほど、ファーストコンタクト物のSFだったのか。 たしかに、これは読ませます。実に面白い。 何と言っても高巳と光稀(ツンデレマンセー)のコンビが良い。 ただ、その分少年サイドの展開がどうも……。 何がイヤって賢しいガキが私怨で状況をかき回すという展開がイヤ。 単刀直入に言うと白川真帆っ…

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ミナミノミナミノ 秋山瑞人 電撃文庫

南の島の、ボーイ・ミーツ・ガールストーリー。 もちろん、その娘はかなり変わってて、島にもいろんな秘密があるわけで。とにもかくにも秋山瑞人だけあって、文章、ストーリーテリングとも抜群で圧倒的に読ませる。今回もそれなりの長編になりそうなんだけど、導入部としては完璧と言ってもいい出来。 アニメで言うと途中までは、「マクロス・ゼロ」なんだけど、最後は「ムリョウ」みたいな。まあ、微妙に前作のイ…

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蒲公英草紙―常野物語 恩田陸 集英社

常野物語シリーズ二作目。 少し道徳的すぎるのは気になるが、愛しくも切ないいい話だった…………エピローグ手前で終わってさえいれば。 たしかに時代を考えるとこのラストでも仕方がないのかもしれないが、それにしても救いのない話であることよ。 いやま、まさかこの流れでこういうエピローグを持ってくるとは思わなかったんである意味インパクトはあるのだけれども。 ちなみに直木賞を落ちてしまった…

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All You Need Is Kill 桜坂洋 集英社スーパーダッシュ文庫

評判がいいので買ってみたけど、なるほどなー。 ケン・グリムウッド『リプレイ』+『ガンパレ』+『イリヤの空、UFOの夏』他諸々みたいな。 ループのたびに死にながら少しずつ強くなっていく主人公、唯一全てを分かり合えるはずの彼女が……という実にヘヴィかつシリアスな設定ながらも、しっかりとした文章で最後まできっちり読ませるのだった。 ただ、神林長平の帯のコピーがちょっち謎というか、いや…

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