まもなく電車が出現します 似鳥鶏 創元推理文庫

『理由あって冬に出る』、『さよならの次にくる〈卒業式編〉』&『さよならの次にくる〈新学期編〉』に続くシリーズ第3作が約1年10ヶ月ぶりに登場。 いわゆる日常の謎系な学園ミステリということで提示される謎自体はささやかではあるんだけど、そこはそれ丁寧に組み立てられたプロットと魅力的なキャラ造形、そしてユーモアたっぷりの語り口で読ませてくれます。 ちなみに今回は五篇の短編が収められてるんだ…

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キケン 有川浩 新潮社

ごく一般的な工科大学の数ある部活の一つである「機械制御研究部」、通称【機研(キケン)】。 これはその【機研】黄金期、今となってはレジェンドとなった時代を過ごした若者たちの物語である。 有川浩ならではの抜群のリーダビリティをもって超ゴキゲンに疾走する青春グラフティの快作。 個人的には回想形式があんま好きじゃないってのもあって?と思っていた構成だけど、いやあラストの見開きで大なっとく。…

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2008年小説ベスト10

2008年に読んだ本のベスト10(3+7)を選んでみました 1位 テンペスト 上 若夏の巻 テンペスト 下 花風の巻 池上永一 角川書店(2008年8月刊) 珊瑚礁王国の美少女・真鶴は性を偽り、宦官になる―――― 2008年ベスト1は、末期琉球王朝を舞台に男と女で揺れ動くヒロイン真鶴の数奇な人生を描いた疾風怒濤の歴史ロマン。 一読巻を置くに…

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流星の絆 東野圭吾 講談社

わりと評判良さげだったので3月末に購入、とりあえず買ったことに安心して積んでたらいつのまか12月に。 さすがに年越すのも何なんだよなあということで先頃ようやく読了。 読み始めたらそこは東野圭吾、巧みなストーリーテリングで一気に読ませます。 ただなあ、帯の「すべての東野作品を超えた現代エンタメの最高峰」とか「この小説は私が書いたのではない。登場人物たちが作りだしたのだ」とかどう考えて…

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2009年版 このミステリーがすごい! 宝島社

今回も500円だったんでさくっと購入。 このミステリーがすごい! 2009年版posted with amazlet at 08.12.07Takarajima Books 売り上げランキング: 27Amazon.co.jp で詳細を見る だいたい昨年とほぼ同じスタイルだけど、今年は4人の書評家による新人賞クロスレビューが新規に登場。 かなり主観が入った書評にな…

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弱法師 中山可穂 文春文庫

「報われない恋」というテーマの中編を三編収めた作品集。 今回はレズビアン的要素を抑えているのが特徴というか。 表題作(弱法師と書いて「よろぼし」と読む)も悪くないが何と言っても白眉は「卒塔婆小町」。 自暴自棄になった主人公が捨てた原稿をホームレスの老婆が拾うシーンから始まり人の業というものを凝縮したような終わりを迎える編集者と作家の壮絶な物語は圧巻としか言いようがない。 …

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2008年4月に読んだ本

悪人 吉田修一 朝日新聞社 2008年版『このミステリーがすごい!」17位。 吉田修一の新境地というべき傑作。 こういう救いがない話をドキュメンタリータッチで描く(宮部みゆきとか桐野夏生とか)というお話は好みではないんだけど、そこはさすが吉田修一というべき筆力で圧倒的に読ませます。 首無の如き祟るもの 三津田信三 早川書房 2008年版…

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密室殺人ゲーム王手飛車取り 歌野晶午 講談社ノベルス

〈aXe〉〈ザンギャ君〉〈伴道全教授〉〈044APD〉〈頭狂人〉。 奇妙なハンドルネームを持つ常軌を逸したミステリマニアがネット上で交わった時、驚異の殺人ゲームが始まる……。 謎造りのために自ら殺人事件を起こしそれを謎として披露するという前代未聞の設定はさすが歌野晶午というべきか。 著者によるともともとこのアイデア自体は前からあったそうだけど、あまりにリアリティが亡くボツにして…

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アンノウン-UNKNOWN- 古処誠二 文春文庫

自衛隊基地内の侵入不可能はずの部屋に、盗聴器が仕掛けられた。 この謎に挑むは、防諜部調査班の浅香二尉と同基地所属の野上三曹。 はたして犯人は? 動機は? 最近すっかり戦争文学作家になった感のある古処誠二(毎回直木賞にノミネートされては落ちてるのがかなり気の毒)のデビュー作にして第14回メフィスト賞受賞作。 真相は、解かれてみればなるほどというもので意外性はあるとはいえない…

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不気味で素朴な囲われた世界 西尾維新 講談社ノベルス

『きみとぼくの壊れた世界』から約四年ぶりとなるシリーズ第2弾。 といっても世界観が一緒と言うだけで登場人物はオール新キャラなのでこちらから読んでもおおむね問題はないかと。 いやまあ、正確に言うと前作からのゲストキャラが少しだけ登場須するので出来るなら前作も読んだ方がベターではある。 さて、本編。 前作よりは酷いことにはならないだろうとと高をくくって読んでたら、やってくれる…

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2008年2月に読んだ本

木洩れ日に泳ぐ魚 恩田陸 中央公論新社 最後の夜を迎えたある男女二人が明かす一夜を描いた恩田陸ならではミステリー。 緊張感のある会話がとにかく絶妙で読ませます、きっちり決着が付くのも良いやね。 密室キングダム 柄刀一 光文社 2008年版このミス16位。 密室に拘った二千枚に及ぶ長編本格ミステリ。 とにかく力作であることは伝…

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もっとすごい! このミステリーがすごい! [別冊宝島1503]

「このミス」20周年を記念したスペシャル版。 もっとすごい! このミステリーがすごい! (別冊宝島 1503 カルチャー&スポーツ)posted with amazlet at 08.09.28宝島社 売り上げランキング: 8973Amazon.co.jp で詳細を見る 20年のベスト・オブ・ベスト(国内編の1位は宮部みゆき『火車』、以下、山口雅也『生ける屍の死』、京極夏…

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朝日のようにさわやかに 恩田陸 新潮社

短編集としては『図書館の海』以来五年ぶりとなる短編集。 ミステリー、SF、ファンタジー、ホラー、童話などなどバラエティに富んではいるものの、どれを読んでも恩田陸らしさに溢れていて読みごたえあり。  いやまあ表題作はそんなでもなかったんだけど、『「ABC」殺人事件』というアンソロジー企画のために書き下ろした会話だけのミステリ「あなたと夜と音楽と」、いかにも恩田陸らしい雰囲気の「赤い…

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2008年1月に読んだ本

赤朽葉家の伝説 桜庭一樹 文藝春秋 今月の傑作 圧倒的な筆力で読ませる女系三代クロニクル。 なかでも桜庭一樹の作家性が爆発した感のある第二部が素晴らしい。 私の男 桜庭一樹 文藝春秋 今月の問題作 ご存じ第138回直木賞受賞作。 どうしようもない男と女の業を極限まで描きあげた衝撃作。 とはいえ、好みとは言い難いかな。 …

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夕陽はかえる 霞流一 早川書房(ハヤカワ・ミステリワールド)

プロの暗殺組織〈影ジェンシー〉から仕事を請け負うプロの殺し屋〈影ジェント〉が暗躍する闇社会を舞台に、殺し屋同士の活劇、そして殺し屋が殺し屋殺しを推理するという本格ミステリ、双方の面白さを取り込んだ異形のエンターテインメント。 この小説の何が凄いって、山田風太郎の忍法帳を思わせるB級アクションがこれでもかと展開する奇天烈な世界設定を踏まえたうえで、本格ミステリとしてもあっと言わせるトリッ…

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2007年小説ベスト10

2007年に読んだ本のベスト10(3+7)を選んでみました。 1位 化物語 上下 西尾維新 講談社BOX(2006年12月刊) 2007年、最高に笑った小説。 戯言シリーズと匹敵するというかバランスを考えると著者の最高傑作と言えるんじゃないだろうか。 2位 スロウハイツの神様 上・下 辻村深月 講談社ノベルス(2007年1月刊) …

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2008年版 このミステリーがすごい! 宝島社

20年間の感謝を込めてということで、今回は500円とワンコインで発売。 このミステリーがすごい! 2008年版posted with amazlet at 08.10.14宝島社 売り上げランキング: 89952Amazon.co.jp で詳細を見る 原点回帰と新機軸をテーマに大リニューアルということだけど、ジャンルごとのブックレビューを削った(座談会は健在)代わりに…

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11月に読んだ本

インシテミル 米澤穂信 文藝春秋 今月の傑作。 ミステリ心溢れるガジェット満載の本格ミステリ(ちなみに今年のこのミス10位)。 今回は珍しくちゃんと感想を書いてみました、感想はこちらから。 ふたつめの月 近藤史恵 文藝春秋 『賢者はベンチで思索する』の続編。 刀語 第8話 微刀・釵 西尾維新 講談社BOX シリ…

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インシテミル 米澤穂信 文藝春秋

アルバイト情報誌に載った時給十一万二千円のバイト。 あるモニターは冗談半分で、あるモニターは自らの才覚を試すため、あるモニターは金のため、あるモニターは車を買うために。 そうして集まった12人が案内されたのは地下空間、その名も〈暗鬼館〉。 そのラウンジの円卓には12体のネイティブアメリカン人形が……。 米澤穂信がクローズドサークル物に堂々と挑んだ長編本格ミステリ。 独特…

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猫島ハウスの騒動 若竹七海 光文社カッパ・ノベルス

葉崎半島の先、三十人ほどの人間と百匹を超える猫が暮らす通称・猫島で起こる奇妙な事件の数々。 『死んでも治らない』以来4年半ぶりになる書き下ろし作は、とにかく猫、猫、猫がいっぱいの猫ミステリ。 個性的な猫たちの描写はもちろん、謎解きにも猫が重要な役割を果たすあたり猫とミステリの相性の良さをあらためて再確認したというか。 もちろん人間たちも個性的、しかしこちらはいささかシニカルな描…

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10月に読んだ本

映画篇 金城一紀 集英社 今月の傑作その1 帯の 今すぐ映画が見たくなる。今すぐ誰かに読ませたくなる。笑いと涙と感動が詰まった、完全無欠のエンターテインメント というのもあながち嘘でもない面白さ。まあ完全無欠はどうかと思うけど。 なかでも第1話の「太陽がいっぱい」はまさに傑作の名にふさわしい作品に仕上がってます。 構成がまた巧いんだ。 青年のための読…

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きつねのはなし 森見登美彦 新潮社

京の骨董屋を舞台に緩やかにつながりあう四つの物語を収めた完成度の高い連作ホラーファンタジー。 前作『四畳半神話大系』、デビュー作『太陽の塔』とは雰囲気をがらりと変えた異色作ということもあり最初は面食らったものの、その端正な語り口、古都の裏側に潜む闇をかいま見せる手つきの巧みさなど、あらためて作者のポテンシャルの高さを感じさせる傑作に仕上がっています。 実際、『夜は短し歩けよ乙…

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9月に読んだ本

サクリファイス 近藤史恵 新潮社 今月の傑作その1 自転車ロードレースを題材にした著者渾身のスポーツ・ミステリー。 ネタバレになるから何も言えないが、タイトルと不可分に結びついた真相、そして余韻のあるラスト。 おそらく今年のこのミスで上位を争うのは間違いない傑作。 ミノタウロス 佐藤亜紀 講談社 今月の傑作その2 ロシアの田舎地主の息…

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恋する組長 笹本稜平 光文社

東西の大手ヤクザ、そして地場の独立系ヤクザが三つ巴の様相を呈してるきな臭い街を舞台にそんなヤクザ相手の依頼をメインに営業する私立探偵「俺」を主人公にした連作ハードボイルド。 こうやって書くと殺伐とした印象を受けるかも知れないけど、実際読んでみると悪人ではあるけどどこか憎めないキャラクターたち(いなくなった愛犬探しを依頼する犬馬鹿組長、恋女房にメロメロな悪徳刑事、年甲斐もなく一目惚れした女探…

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天使はモップを持って 近藤史恵 文春文庫

現在三冊まで出ているキリコシリーズの一作目。 新入社員の梶本大介をワトソン役にして、オフィス内の不倫、マルチ、ダイエットなどなどのトラブルを十代後半の清掃作業員キリコが鮮やかに解決していくいわゆる日常の謎な連作短編集。 ミステリ的には小粒ながらちょっとした恋愛模様と時折覗かせる「毒」が作品のアクセントになってるのがミソ、軽妙な筆致もあいまってリーダビリティは抜群です。 フェ…

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8月に読んだ本

朝日のようにさわやかに 恩田陸 新潮社 ミステリー、SF、ファンタジー、ホラー、童話などなどあらためて恩田陸の才能を感じさせるバラエティに富んだ短編集。 きつねのはなし 森見登美彦 新潮社 緩やかにつながった四つの物語を収めた完成度の高い連作ホラーファンタジー。 なかでも好きなのは「果実の中の龍」かな。 水神の祭り グイン・サーガ…

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桜さがし 柴田よしき 集英社文庫

陽介、歌義、まり恵、綾。中学の同級生だった四人の恋模様と共にさまざまな事件が…。 柴田よしきが贈る京都を舞台にした温かくも切ない青春ミステリーの佳作。 趣向としては『ふたたびの虹』とほぼ同じなんだけど、この作品のミソは舞台が京都というところ。 柴田よしきの京都物は他の柴田作品とはまた違った魅力があると思う。 陽介と同じく京都に住んでいた時分には名所にはほとんど行かなかった口だ…

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ふたたびの虹 柴田よしき 祥伝社文庫

東京で小料理屋「ばんざい屋」を営む女将を主人公にした連作ミステリー。 いちおう形式としては東京創元風な連作ミステリなんだけど、大人の恋愛物語として読めるところがミソ。 連作ごとのお話(「思い出ふた色」での真子ちゃんのセリフ、「たんぽぽの言葉」での斉藤の想いとか)も実にいいんだけど、やはりメインは重い過去を持つ女将と彼女を愛するこれもいい年をした古道具屋主人との不器用な恋。 たとえ五…

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四畳半神話大系 森見登美彦 太田出版

森見登美彦長編第二作。 日本ファンタジーノベル大賞を受賞しつつもほとんどファンタジーじゃなかった前作『太陽の塔』と違い今回はきっちりSF、それもパラレルワールド物だったりする。 構成的には、繰り返しのくどさがミソというか。 もちろん、独特の文体で語られるどうしようもない男たちの物語&学生小説としての魅力は健在。 ヒロインの明石さん&もちぐま(表紙参照)もなかなかキュートだしと…

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7月に読んだ本

日本沈没 上下 小松左京 小学館文庫 今読んでもまったく古びないパニックSFの傑作。 鏡の国の戦士 グイン・サーガ外伝21 栗本薫 早川書房JA 『七人の魔導師』から少し後という時代設定の外伝。 雰囲気は悪くない。 刀語 第四話 薄刀・針 西尾維新 講談社 この構成にはやられた(笑)。 コーンクリー…

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